幻時夢想話3

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やっとこさの三話です。
初めて読む方はここからどうぞ。

・・・・・・何か、逃げ出したい。
ちらりと隣を横目で見て、カイレインはこっそりとため息をついた。
(きっとこれは夢で幻だ目を覚ませ起きたら今までのことは全部夢であいつらに『馬鹿だな』とか笑われるんだよそれはそれでムカつくけど本当に夢であって欲しい!)
そう、いくらカイレインが願っても、目の前の現実が変わってくれるわけでもなく。
何かした覚えも無いのに、先ほどから徐々に不機嫌になっていく隣の金髪頭をまたちらりと見て、気づかれないように息を吐く。
「校長から聞いたと思うが、このスーノルド学園では基本、グループ制を取っている。『学園』に入ったら、親とも会うことは無いからな。与えられた班(グループ)の中で、少人数での団体行動を学んでもらうという事らしい。と、言ってもうちの班ほど人数が少ない所も無いがな」
コツコツと、やけにだだっ広い廊下に靴音を響かせながら、その不機嫌金髪――レニサ・ヴェルーラが学園の基本的な事を説明していた。
小柄な体に少し大きめの制服は、どこか違和感を感じさせる。
歩く度に括り上げた長い髪を揺らし、レニサは前を睨み付けるようにしながら、まるで軍人のように風を切って歩きながら続けた。
「更に、その中でペアとなる相手を決める。大体同年齢同士でペアになっているが、中には違う学年同士でなっている事もある。相手がいない場合は、三人で組むか、フリーだな。同年齢の場合は基本、実地訓練など大体のものはその相手と組んで行う。お前なら、私とだ」
「はぁ・・・・・・」
何となく返事を返すと、今までリズムよく鳴っていた足音が、止まった。
急に立ち止まった彼に、何事かとカイも足を止めて振り返ると、レニサは碧色の目を不機嫌そうに細めてカイを見上げた。
「おい」
「・・・・・・何でしょう?」
「お前、もう少しどうにかならんのか?」
「・・・・・・はい? な、何がでしょうか・・・・・・?」
急に「どうにかならないのか」と問われても、カイにはさっぱりだった。
寧ろ、こっちがその不機嫌の理由を聞きたい。
何が何だか分からずに困り果てるカイを、レニサは穴が開くほどじーっと見つめると、何やら疲れた様子で深く息を吐いた。
「その無関心そうな様子だ。さっきから、時々別な所に気を向けていただろう? 説明している時はこっちを見ろとまでは言わんが、注意くらいは向けてくれ」
ちゃんと聞いているのか不安になる。
そう言いながら、レニサは俯き加減に頭を抑えた。
その、小さな子供を相手にして疲れた大人のような様子に、カイは「しまった」と内心頭を抱えた。
態度に出すつもりは無かったが、やはり気が乗らない事が無意識に出てしまっていたらしい。
・・・・・・まぁ、意識が別に行く理由は他にもあるのだが。
流石に申し訳なくなって「すみません」と謝ると、レニサは「いい」と首を振った。
「こちらも少し、敏感になり過ぎた。久しぶりにペアが決まって、緊張していのかもな・・・・・・」
「え?」
「いや、こっちの話だ・・・・・・」
最後の呟きに思わず聞き返したカイに、軽く手を振ってレニサは歩き出そうと顔を上げたが、ふと思い出したようにカイを振り返って、
「あと」
「はい?」
「敬語は止めろ。 どうせ家族のようなものだからな」
そう言って歩き出したレニサの背からは、先ほどから感じていた威圧感が薄れている気がした。
カイはそれをポカンとした様子で見送り、レニサが言っていた、何度も意識を飛ばしていた廊下の窓を横目で見る。
――そこには先ほどから、カイの代わりに窓に映っていた男がどこか嬉しそうに何かを喋るように口を動かしている。
それにうんざりした様子でカイは息を吐くと、中々来ない彼を呼んでいるレニサの元へと慌てて走っていったのだった。



*  *  *



「・・・・・・ところで」
地下へと行く階段を下りている途中で、レニサはずっと気になっていた事を聞いた。
「お前は今までずっと『外の学校』に通っていたと言うのは、本当か?」
「えぇ・・・・・・まぁ」
隠そうとはしているが、僅かに入っている興味深げな声を聞いて、カイは曖昧に頷く。
通常、人は生まれたらすぐに『アグネ』と呼ばれている特殊強化型天珠に、天珠の有無を見てもらう事になっている。
そこで天珠持ちだと判明した場合、10歳まで親元で過ごし、それから天珠の研究・教育施設の学園へと入学しなければならない。
何人かは学園への入学を抵抗する者もいるそうだが、救世主と謳われる天珠持ちにそういう人間も少なく、いてもすぐに学園の人間に強制連行されてしまうらしい。
つまり、10歳を過ぎて更にカイの年齢まで外の世界で生活する事は、不可能なはずなのである。
因みに、スーノルドに来て判明した事だが、今回カイを発見したのはスーノルド専属のアグネだったらしい。
それを聞いたときカイレインは、「あんな離れた場所から見つけるなんて、どんだけ強い力なんだよ」と呆れると同時に少し恨んだが、見つかってしまったものは仕方がない。
ちょっと居心地悪そうに顔を背けるカイに、しかしレニサは気にする事なく「そうか」と呟くと、右手を顎に添えて考え込むように言った。
「最初はアルテニゾか、ディシマニア、グロッファスのどこからの編入が間違って伝わったのかと思ったんだが・・・・・・本当だったのだな」
世の中、何が起こるか分からないなと呟くレニサに、「本当に」と心の中で同意しながらカイ達は最下層へと辿り着いた。
そこから更に入り組んだ石造りの狭い通路を歩いて、とうとう一つの扉の前へと立った。
人がいるのか、僅かに扉の向こうから声が聞こえてくる。
「ここが私達の所属する班の待機室だ。とりあえず、お前の天珠のランクとタイプが判明するまではここの所属になると思う」
自分で言うのもなんだが結構優秀なんだ、と少し嬉しそうに笑うレニサが、扉を開けようとドアノブに手をかけた。
が、その時
「――・・・っ! 避けろ!!」
怒声のような悲鳴が扉の向こうから聞こえたかと思うと、カイは急に横へと引っ張られ、体勢を崩して倒れこんだ。
と、同時に金属に何かを叩き付けたような音が狭い廊下に響き渡って、思わず耳を両手で塞いで目を瞑る。
そしてギィィィィ・・・・・ン、と暫くの耳鳴りの後、
「ミレン! ・・・・・・あー、お前ら大丈夫か?」
申し訳なさそうな低い声が響いて、カイはゆっくりと目を開けた。
どうやら自分が倒れたのは、レニサが引っ張ったからなのだろうと、すぐ横で同じく倒れこんでいる彼を見てそう思った。
そして先程の音が何かと、ゆっくりと当たりに目線を向けたところで絶句する。
――比較的分厚い鉄製の扉を突き破って、長机がさっきまで二人が立っていたすぐ後ろの壁に、半ばめり込む様に突っ込んでいた。
「あー、うん。流石ディープ作の机。・・・・・・傷一つねーのな」
「・・・・・・トナレスか?」
先程の声の主なのか、腰まである長い癖のある黒髪を垂らした男がぽんぽんと突き刺さった机を叩きながら、心底飽きれた調子で言った。
そんな男に、レニサは床に打ち付けた肩を抑えながら尋ねるように声を掛けた。
男はレニサに頷くと、何が起こったのか理解出来ていないカイとレニサに手を貸し、立ち上がらせる。
「一体何が・・・・・・」
と、尋ねようとしたレニサは、しかし横で「ぐすん」と鼻をすする音を聞いて、慌てて部屋の中を覗きに行った。
「いつもの“アレ”だよ。お前らに気づいてよかった、じゃなきゃ今頃死んでたな」
疲れたように頭を掻いて、男はやっとカイの方に顔を向けた。
「・・・・・・えーと、こんなお出迎えで申し訳ないけど・・・・・・新入生?」
「・・・・・・・・」
未だに突き刺さったままの机に目を向けていたカイは、ギシギシと男に顔をやったが、状況理解仕切れない頭が声を発する事を許さない。
男も何を言えばいいのか分からないのか、レニサが部屋から出てくるまでずっと、二人の間に奇妙な空気が漂っていたのだった。

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大分変わりました、三話目。
前と同じ文章は三行くらいしかないですね!
本当ならここで後三人出てくるし、トナも自己紹介してましたよね。
あまりの出来事にトナもふざけなかった、お前偉い!(ぇ
しかし、色々なんかおかしい今回の文。
・・・・・・書き直した意味はあるのか無いのか・・・(ぁ
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